くらしなんでも相談Q&A

定年以降も同じ職場で勤務したいのですが〈2〉

相談内容

【事例】もうすぐ定年を迎える男性からの質問
半年後に60歳定年を迎える者です。今年から厚生年金の支給開始年齢が61歳に引き上げられ、すぐに年金がもらえなくなったと聞きました。年金収入がない のに、このまま定年で退職する訳にもいきません。勤務先からの話によれば、定年後も65歳まで継続して勤務できる制度があるとのことです。そこで、次の3 点について質問があります。

① 定年後の賃金と労働条件は現状保障されるものなのでしょうか

②60歳から厚生年金を繰り上げてもらうことはできませんか

③ 定年制度そのものについて疑問に思います。年齢差別ではありませんか

解答

➀65歳までの雇用が義務付けられているが同一労働条件まで求めていない 高年齢者雇用安定法では、

定年を65歳未満に定めている事業主に対して 次のどれかの雇用確保措置を講じなければならないと規

定しています。

 ・65歳以上の定年引き上げ

 ・65歳以上までの継続雇用制度導入

 ・定年制の廃止

このうち、継続雇用制度については、平成28年3月31日までは61歳以上を対象とした雇用基準を労使協定で

締結し 人選することができます。現在は61歳までは希望者全員雇用することを義務付けており、段階的に

65歳まで引き 上げられることが決まっています。 継続雇用制度は、単に継続雇用するためのレールを敷い

ているに過ぎないのであって、あくまで賃金等の労働条件は 労使双方の合意によって成り立つものとして

います。つまり、定年前の労働条件と同じにしなければならない決まり はどこにもありません。

提示された新しい労働条件に不服ならば労働契約不成立となり、継続雇用というレールから 降りて退職する

しかないのです。  

実際には、高年齢者の求人が厳しい状況から、多少不利な労働条件であっても、雇用保険の高齢給付受給と

低下した賃金額を受け入れ(在職年金は段階的に支給)、慣れ親しんだ職場にそのまま勤務する人が多いよ

うです。 ただし、過去において、このような年齢による賃金カットや役職定年制を不服として訴訟に至った

ケースも多くあり ます。代表的な二つの判例(みちのく銀行事件、第四銀行事件)をみて明らかなように、

その程度や状況によって労 働条件の不利益変更となるか判断が対立しています(紙面の都合上詳細は省略

します)。

 

➁厚生年金の繰り上げ受給は慎重に・・・

今年の4月から、厚生年金の支給開始年齢は昭和28年4月2日から30年4月1日生まれの男性を対象に61歳と

なり、その 後、生年月日によって段階的に65歳まで引き上げられます。将来、年金受給できない期間が

60歳以降最長5年間となる ことが確定しています。 ところで、年金受給できない期間、失業や病気などで

働くことができなければ、完全に無収入となり生活に窮する事 態となってしまいます。そこで、無収入と

なる期間を救済するために、厚生年金を60歳から繰上げて請求できる制度 ができました。ただし、年金額は

繰上げる年数によって1年につき6%の年金額が減額されます。

これだけで済めばたいした減額ではないのですが、厚生年金の繰り上げ受給は、老齢基礎年金と一緒に行う

決まりがあり、本来65歳から 受け取れる老齢基礎年金額が最大30%減額されて60歳から支給されることと

なります。

この同時繰上げ減額について は注意が必要です。

 一旦減額された年金額は一生元にはもどりません。また、繰上げ受給選択は後になって取消すことはでき

ませんから 慎重に判断してください。

 

➂定年制度は年齢差別か?

定年制度は、これまで終身雇用制がとられてきた日本の企業において長く採用されてきた歴史があります。

採用から 定年退職までひとつの企業で働き、定年を迎えて退職するというスタイルは一昔前までは当り前の

ことでした。

しかし、近年は中途で転職することも珍しくなく、また派遣労働者や非正規労働者、有期契約労働者など

多様な働き 方が増加し、以前と労働環境が大きく変わってきています。こうしたことから、ご質問のように

定年制そのものに疑 問を持つ方も増えてきていることも事実です。しかし、これまでの日本の雇用社会で

前述のとおり定着してきた定年 制度を、いきなり年齢差別と認めることができるでしょうか。

そもそも年齢を重ねることはすべての人間に等しい現 象であって、それを差別要因とするならば、年齢に

伴って賃金が上昇する年功型賃金制度は、若年者に対する差別と なってしまいます。 また、定年制度は企

業にとって、若年労働者の雇用や昇進の機会を開く一面もあり、合理性があることも見逃せませ ん。

さらに、定年制度を年齢差別として禁止すれば、年齢を問わずに労働者の実力を主体として雇用維持の判断を

する事 態となり、実力が伴わなければ即時解雇となることも想定され、労働契約法16条の解雇規制と相反して

しまいます。

 このように、相対的に考えると、一慨に定年制度を年齢差別と決めつけることはできないと思います。

※回答者

特定社会保険労務士 山口正人(2013.7)

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