Q. 相談内容

事例①
 認知症になってしまった母の入院費を支払うため、母の通帳をもって銀行に引出しに行きましたが「本人以外はダメ」とのことで引出しができませんでした。銀行員に「成年後見人を就けてください」と言われましたが成年後見人とはなんでしょうか。

事例②
 一人暮らししている高齢の母のもとへ布団の販売業者と名乗る者が訪ねて来て、母をそそのかし高額な毛布を買わされました。母は最近、物事の判断がつかなくなってきていて困っています。何とか契約を取り消したいのですがどうすればよいですか?

A. 回答

事例①の回答
 認知症や知的障害などにより、判断能力の低下が認められる方については、その方に代わり財産を管理したり、施設への入所契約などを行う人が必要です。
 民法7条では、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は(省略)後見開始の審判をすることができる。」と定 められています。後見開始の審判がなされると、事理を弁識する能力を欠く常況にある者を「被後見人」とし、被後見人に代わって法律行為の代理を行う「後見 人」が選任されます。
 後見人には親族が最も多く選任されており、次いで司法書士、弁護士、社会福祉士といった専門家が選任されております。
後見人の職務は大きく分けて「財産管理」と「身上監護」です。
 財産管理は読んで字のごとく、被後見人の預貯金・不動産などの財産を適切に管理していく任務です。後見人は被後見人の財産を自らのために使用したりすると刑事上の業務上横領となり、民事上でも損害賠償の対象となります。
身上監護は耳慣れない言葉ですが、被後見人が人間らしい生活ができるよう優良な施設との入所契約などを行うことや、福祉サービスを受けるための手続きを行うことなどを指します。
 事例の場合は、成年後見人を就けることにより、お母様の預貯金を引き出すことができ、入院費を支払うことができます。 

事例②の回答
 高齢者を狙った悪質商法は後を絶ちません。財産に余裕のある高齢者(単身や日中自宅にいる方)をターゲットとし、訪問販売により高額な商品を買わせる手段が横行しています。
 このような場合に成年後見人を選任することで売買契約の取り消しをすることができます。被後見人(事例の場合は母)がした契約については、取り消しができるものとして扱われるため、後見人から相手方業者に対し契約の取り消しを申し出ることが可能です。取消権を行使するこ
とで売買契約は無効なものとなります。
 ただし、注意が必要なのは日常生活に関する行為については取消権が制限されていることです。日用品の購入などについては取消権を認めてしまうと、社会生活上、支障をきたしますのでこのような制限があります。

※ワンポイント

事例①のワンポイント
 後見人以外にも、本人の状況に応じて保佐人・補助人といった制度があります。どの制度を利用するかは医師の診断書や鑑定により定められます。医師の診断書は家庭裁判所へ提出する後見開始の審判申立書の添付書類でもあります。
 ちなみに身体的な障害の場合については、成年後見人を選任することはできません。
 後見開始の審判の数は右肩上がりで増えており、今後も高齢化の影響により増えることは明白です。後見人となる人材不足も問題視されています。 また、未成年者について親権者がいない場合には未成年後見人という制度もあります。 

事例②のワンポイント
 取消権については、売買代金を振り込んだりする前に行使することが大切です。一度、支払ってしまった金銭を取り戻すのは非常に大変です。悪質商法には注意しましょう。
また、取消権が制限される場合について、何が日常生活に関する行為なのかを判断するのは非常に難しい問題です。昨今、問題にもなった携帯ゲームの課金制度 について、被後見人が携帯ゲームにはまってしまい、次々に課金を繰り返したところ、請求額が十数万円になってしまいました。この場合、取消権が行使できる のか否かは難しいところです。どんどん複雑化する現代社会の中では、さまざまな事例が存在します。後見人制度は安心を得ることはできますが、決して簡単な 職務ではありません。

※回答者

司法書士 松本 陽