活動報告

2008年9月15日

第40次労働者福祉欧州視察団


第40次労働者福祉欧州視察団
視察報告の概要

 

1.ねらい
ヨーロッパにおける各国ナショナルセンター(労働組合)が中心となって取り組むライフサポ-ト活動と課題(例えば事業の内容、運営にあたってのヒト・モ ノ・カネの手当をどうしているか、さらにはEUや政府、自治体からの補助金とその活用実態など)について事前に行ったアンケート調査結果に基づき、フラン ス、ベルギー、イタリアにおける取り組みや考え方、具体的事例(現場)などについて視察し、日本におけるワンストップサービスを中心とする労働者自主福祉 運動の実践とこれからの活動に活かす。

 

2.受け入れ及びご協力いただいた組織
   ○国際労働組合総連合(ITUC)
○フランス労働総同盟「労働者の力」(CDT-FO)◎福祉部門=ASSEDIC
  ○ベルギ-労働総同盟(FGTB) ◎直接対応
  ○イタリア労働総同盟(CGIL) ◎福祉部門=INCA、CAAF
  ○イタリア労働組合連盟(CISL)◎福祉部門=INAS、CAAF
  ○イタリア労働連盟(UIL)   ◎福祉部門=ITAL、CAF、UNIT、ADOC、ANCS
  
○連合国際局
  ○連合ヨーロッパ事務所

 

3.視察先・日
○視察期間 2008年9月1日(月)~11日(木)
  
9月3日(水)フランス(パリ) CDT-FO、ASSEDIC(パリ市「バーシィ地区」)、UNEDIC
  9月4日(木)ベルギー(ブリュッセル) ITUC本部
  9月5日(金)ベルギー(アントワープ) FGTBアントワープ支部
  9月8日(月)イタリア(ローマ) CISL-INAS
  9月9日(火)イタリア(ローマ) UIL-ITAL、CGIL-INCA、SPI

 

4.参加者  22名 (女性5名)   
長野県からは、青木正照氏(長野県労福協・専務理事)が参加しました。

 

5.視察概要
A.ライフサポート関係

 

<紹介された主な取り組み内容>
○失業給付・就職サポート     フランス(CDT-FO)、ベルギー(FGTB)

○年金・税金サポート       イタリア(CISL、UIL、CGIL)

 

<5つのナショナルセンター(NC)に共通したもの>

○失業手当や年金の支給に労働組合(ナショナルセンター)がきっちりと関 与し、労働者へのライフサポートをしっかりやっていること。
○失業給付なども労使で自主的に運営、それを政府が追認しサポートをしていること。

<各NCの関わり方>
○フランスの場合  <失業保険制度>
(1)経営者を社会的パートナーと位置づけ、制度の規則を労使協定で決め る。考え方「市場経済は良い失業保険制度があってこそ機能していく」
 また失業制度は、企業の人事管理サポートとしての役割も持っている。
(2)ASSEDIC(ライフサポートセンタ-。労使同数で運営)は、労使からの保険料の徴 収と給付金の支払い、失業者の登録、求職者フォローアップを行う。フラ ンス全土に700カ所。ASSEDICの統括組織はUNEDIC。職員総数15,000人。
(3)保険料 6.4%(使用者側負担 4.0%、労働者側負担 2.4%)。
(4)ASSEDICは、ANPE(公的就職支援機関)と連携して「個別求職計画」の 実施や職業紹介など、求職者のサポートを行う。ANPEは全土に800カ所。  ASSEDICとANPEは09年1月に統合しワンストップとなる。
(5)連帯制度・・・・低所得で支給期限が切れた人を対象に連帯手当を支給。 70~80万人が給付を受けている。高齢者が多い。

○ベルギーの場合  <社会保障制度>
(1)社会保険料は、法律によって支払の義務が定められている。負担は① 労・使②使用者側のみ③政府の支出(補助金)の場合がある。徴収は、社 会保険庁が3カ月ごとに行う。
(2)制度が対象とするもの・・・・・年金、医療、疾病・障害、保証給与、児童 手当、失業手当、年休、賃金レベルの支払、職業病など。
(3)負担率・・・・使用者側は38.36%、労働者側・・・13.07%。社会保険制度の 総コストは約900億ユーロ。

  
<失業保険関係>
(1) 失業手当は、社会保険庁が失業者に直接支払うのではなく、委託(支払機関)を受けたところが行う。支払機関は4つ、その内3つは労働組 合(FGTB、CSC、ACV)で残りは国の機関。委託の条件は組合員が5万人以上 であること。労働大臣が認可する。 

 

(2)FGTBは組合員を対象に失業者の登録やアドバイス、失業手当の手続き やサポート、関係する事務処理などのサービスを行う。全国に16カ所あ 
 り、その下に支払事務所(県レベル)が多数ある。職員は800人。失業手当 の支払いは銀行口座。業務には専門性が必要なためFGTBは、職員の教育・  訓練、再教育を毎月実施する。失業手当の申請1名につき、事務手数料が 社会保険庁からFGTBに支払われる。この費用を運営コスト(人件費・事務 所 費)に充てている。ただし、この費用は他の分野に使用できない。取り 扱い件数は年間755,000件(全体の約40%)、手数料は約30億ユーロ。

 

○イタリアの場合  <パトロナート>
 イタリア独特のライフサポート制度で、国が法的に認知しているもの。
 イタリアでは各種社会保障や税金などの申請手続きが法的・事務的な面
 で大変に煩雑なため、主に3つの労働組合(CGIL、CISL、UIL)とキ
 リスト教団体(ACRI)の計4つが国の委託を受けてこの申請手続き
 のサポート事業(無料サービス)を行っている。ただし労働組合は運
 営に直接参加できないため個別に支援機構をつくり、活動している。
 この機構は事実上、各労働組合の福祉部門の役割を担っている。国の
 認定には①全ての人を対象とする②民主的組織運営③労働省への登
 録が必要となる。この機構の役割を一言で言えば、公的機関と労働者
(国民)の間の鎹(かすがい)といえる。

 

(1)CISLの場合・・・・INAS(全国社会的支援組織)。
  ①年金、失業手当、保険・共済の申請手続きのサービス提供。職員1200   人。医師350人。全国800支部・海外に90出張所(職員150人)。
  ②資金は、年金基金から支払われる。INASは年間450万件を取り扱い、年  金基金から約1億ドルが提供されている。
  ③対象・・・・50%が組合員。55%が非組合員(このうちサービスを受けた14  万人が組合員になった)。
  ④失業対策で就職斡旋は国の仕事であり、行っていない。

         
        ・・・・CAAF(税金申請サポート組織)
  ①イタリアでは1年に1度税金の確定申告をしなければならないが、手   続きが煩雑(間違えると罰金)なためそのサポートを行う。
  ②昨年200万件の申請手続きをサポート。1件につき20ユーロが国から支
払われる。

(2)UILの場合・・・・ITAL(年金・医療福祉サービス組織)
①国内に700支部。海外にも出張所がある。 
・・・・CAF(税金申請サポート組織)
・・・・UNIT(住宅生協)
①住宅価格の適正化、賃貸住宅への支援など
・・・・ADOC(全国消費者連合)
①会員は73,000人。入会金1人5ユーロ。全国209支部。職員1,500人
(ボランティア)。
②管轄は経済発展省。認可の条件は、会員3万人以上または20州のうち
5州以上または100県のうち20県以上で組織されていること。
③主な活動 
 ○消費者サポート(窓口サービス)○係争支援○政策キャンペーン
○国民運動(パスタストライキなど)
・・・・ANCS(全国社会組合連合)
  ①労協事業。ワーカーズコーポ。組織条件9名以上。
  ②共済・互助。失業対策。
  ③活動A 老人・子ども・障害者支援 
    活動B 困難な人々の社会復帰支援  

(3)CGILの場合
  ・・・・INCA(労働者福祉組織)
  ①取り扱い件数 120万件。
  ②主な活動。年金、労災、職業病、産休、障害者支援、困難企業支援、
海外労働者支援など。
  ・・・・CAAF(税金サポート組織)
  ・・・・労働相談(CGILの独自組織) 

B.年金受給者組合について
 3つのNCでは積極的に退職者・年金受給者の組織化を行っている。
以下はそのデータ

①組合員  CGIL  299万人     組合員比率55%
      (SPI・退職年金者組合)
CISL  200万人      同    50%
      UIL   57万4,000人  同    25%
②組合費  年金からの天引き。受給額の0.4%~1%、
ただしCGILは0.5%。 
③徴収   年金公社。
④形態   横断的組織。組合員は各NCに直加盟。
(CGILには産別の退職者組織はない)
⑤連携   3つのNCの退職者組合は共に連携している。

C.失業者の組織化                                 
 CGILでは、失業者の組織化を行っている。
①組合費  本人の希望額(概ね1人1ユーロ)
②加盟形態 直加盟(CGILは600万人の全組合員に毎年組合員証を発行
する)
③組合員数 17,720名
④メリット 失業手当、各種社会保険などの
サービス、争議支援など
⑤組合員への就職あっせんはしない。
国の仕事。

                               以上

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