活動報告

2012年1月01日

2012年新春座談会


第5回理事会(12月5日)において近藤理事長が退任し、中山連合長野会長が新理事長に就任しました。今回新年に当たり、新理事長と長野県より受託しているPSモデル事業の美谷島ながのPSセンター長との座談会を行いました。

 

司会(県労福協青木専務理事)
 本日はお忙しい中、新春座談会に御出席いただき誠にありがとうございます。
長野県労働者福祉協議会では、6年前誰もが安心して暮らせる社会を目指し「生活安心ネットワーク事業」への取り組みを始めました。1期2年、3期6年の今 年は最終年度となり、地域に福祉のセイフティネットを張り巡らすことを大きな目的としてきました。その延長として昨年4月からパーソナル・サポートのモデ ル事業に取り組んでまいりました。
昨年は3:11の大震災、長野件東部地震、そして台風など自然災害がおきました。この大災害によって私たちが、生きるとはどういうことなのか、企業の存続 含めて経済活動とは何なのか、働くということはどういうことかを問い詰められた今回の災害ではないかと思います。そうしてまた、この災害を契機に多くの皆 さんの支えあい、助け合いという絆の再生が意識され始めた時期であったのではないかと思います。
このような状況のなかで、労福協の新理事長の中山連合長野会長、美谷島パーソンナルサポートセンター長にお話しをいただければと思います。

 

震災から学んだつながりの再生
■青木… まず今回の震災を通じて私たちは何を学び、何をなすべきと考えまし
 たか?
◆中山… 3:11の大震災の被災地に対して、連合本部では延べ35,000人、長野県で
 も3回にわたりボランティア活動を実施させていただきました。津波と大震災で自
然の脅威、恐ろしさと同時に自然に対して畏敬の念を持ちながら生活しなければい
けない、明日は我が身だというこを教訓として考えていかなければならないと思い
ます。一人ひとりが自分の身は自分で守るためにはどうすればよいか、考える良い
機会ではないかと思います。
◇美谷島… 貧困問題をもう一度考える契機になったのではないか。被災者はすべて
 をなくされ、ある意味で戦後の貧困状態に近いと思います。戦後の日本はみんな貧
 しかったけれども助け合いがありました。しかし最近の日本では貧困と孤立が同時
 に進んでいましたが、被災地ではすべてをなくしたことで、逆につながりが見直さ
 れ、地域を見直す良い機会になったと思います。また被災者が全国に広がり、国民
 みんなの問題にとして考えられる契機となりました。災害に強い地域作り、つなが
 りをしっかり作りながら、災害時に被害を減らせる地域づくりに本気で取り組まな
 ければならないと強く感じています。

 

貧困と孤立化が拡大
■青木… PSモデル事業では、昨年4月から絆社会の再生、地域のコミュニティづ
 くりに具体的に取り組んできましたが、その中で見えてきたものは何でしょうか。美谷島センター等にお伺いします。
◇美谷島… PS事業は、失業と貧困という課題から始まりました。11月末現在で500
 人強の人が相談に訪れ、相談件数が延べ3200件を超えました。重層的で深刻な課題を持っている方が多く、これまでのセイフティネットの枠には当てはま らない人たちが大勢います。そういう人たちは行き場所がない方たちで、そういう人たちを受け止める場所としてモデル事業として展開しています。課題として 稼働年齢の離職者が増え、生活が成り立たないために重層的な課題を抱えていく、家族の崩壊、借金を抱えホームレス化していく、精神的な課題を抱えて一般就 労できない人、地域から孤立していき場所のない人が多いことが課題として見えてきました。社会に溶け込めず、排除されやすい人の存在が出てきていることを 実感します。
 また、衣食住の欠如により緊急支援の必要な人たちへの対応がこれからの課題です。
■青木… 失業から貧困と孤立へ。そして無縁社会が広がる中、労働者福祉という点
 で、中山連合会長はどのようにお考えでしょうか?
◆中山… 社会が病んでいると言えます。この12~3年間に自殺者が毎年3万人を超
 え、長野県でも500人以上の自殺者が出ています。また生活保護も5000世帯、8000人の人が受け、貧困者が固定化されてきていると言えます。そこ から抜け出せないという厳しい現状があります。人が生きる根本である社会で自分のアイデンティティ、存在意義をお互いに認め合える。人からありがとうと言 われる存在になると言うことがとても大事だと思います。その根本は働くと言うこと、働きたいと言う人たちに就労の場を国がきちんと作るべきだと思います。 連合としても、働く場をすべての人に与え、働くことが基本とした安心社会をどう作っていくか、すべての働く者のために頑張ると言うことで、今後もいろいろ な活動をしていきたいと考えています。それには人と人が支えあっていけることが前提で、PSセンターはますますその機能が重要となって来ると思います。

 

弱い人が切り捨てられない社会に
■青木… このようなPS事業の課題から今何が必要と考えますか。
◇美谷島… 現行制度のなかではなかなか手だてがないということが実際です。今は
 目の前の問題に対して民間が実績を積み重ねて仕組化していくことが必要だと思います。PSセンターでは、行政・労働・経営者・民間団体、NPO団体等、 多様な機関・団体に参加していただいて「PSモデル事業連絡会」を立ち上げ、ネットワークによる事業を行っています。 それぞれできることをして、結果と して支援のネットワークができ上がっていくといった仕組み作りを目指しています。貧困と孤立に対して個人個人の問題を解決していきながら、システム化して いくことがPS事業を通してやっていけたらと思います。
■青木… 労働団体として、止むなく仕事を失った人をどうするのか、何が重要と考え
ますか。
◆中山… 敗者復活のできる社会であるべきだと思います。今の社会は敗者になる         
 ると烙印を押されてしまう。落ちてもまた復活できる社会構造を作っていかなくてはなりません。PSは究極のセイフティネットだと思います。そこに国や行 政が責任を持ち、そういう人たちがトランポリン効果でもう一度復活できる、そういったセーフティネットを作るべきです。どんな人でもいらっしゃいと言う社 会を作るために連合としても制度政策要求をしていきたいと考えています。
◇美谷島… 今の制度から漏れる人が多くいます。1回こぼれると、次のセーフティネ
 ットでもこぼれてしまう。その連鎖を何処かで食い止めないといけない。社会全体の支えあいの中で復活できる場が欲しいと思います。労働団体で一般就労できない人たちの手だてを考えて頂けないか。
◆中山… 現実には敗者復活と言ってものなかなか難しいことですが、全体の中での
 施策を講じなければなりません。大震災で人と人とのつながりや絆が実証されたので、できないわけはない。ではどうするか、それは連合や労福協が中心とならなければならないと思います。
◇美谷島… 経営者側にお願いしたいのは、企業で受け入れた時になじみにくい人を
 支えるシステムが欲しい。企業内にサポートする人がいて脱落しそうな人を見守るシステムと、それを公的に支援するシステムがあればよいと思います。
◆中山… メンタルヘルスで入院する従業員が増えている。今の企業は効率を優先さ     
 せダメな人は排除してしまう。そうではなくて社会的包摂、包み込む社会が必要で
す。弱い人を排除する社会は、社会自体が成り立たないと思います。では具体的にどうするか。それは行政と経営者の協力が必要となります。しかし、企業内部では難しいので、外部の力が必要になると思います
◇美谷島… PSセンターでは、メンタル面で問題を抱えている人には、結論を急が
 ず、ゆっくり時間をかけて相談に乗ります。他の専門機関と違うのはその点で、その役割が大きいと思います。悩みを聞いてもらえる場所をあちこちに作れば安心して暮らしていける。そのことに皆が気づくことが大切です。それを発信していくことがPSの役割だと考えています。

 

働く場の受け皿が急務
■青木… 今の経済状況では雇用の拡大は厳しいと言わざるを得ませんが、働く場がなければ何も解決しません。働く場をどう作り上げていけばいいでしょうか。
◆中山… 長野県の有効求人倍率は0,6~0,7.正社員となるともっと少ない。競争原
 理の中で、弱い人たちは仕事に就けない。中間的労働、効率だけでは測れない仕事、働く場があって、後は賃金は国が補助すればいい。その人に見合った仕事が必要です。  
■青木… 受け皿についてセンター長はどうお考えですか?
◇美谷島… 企業に期待するだけでは無理。就職ではなく就労、社会的役割を持つと言うことが大事だと思います。地域やNPO、民間団体等と連携し、協同労働、体験的就労、中間的就労など具体的なモデルを作りだしていくような働きかけをしていきたい。
今仕事を失い、すべてを失って、生きがいを無くしている人が大勢います。それをどうするか。地域の中に寄り添う人が増えてくれればと思います。上下関係で なく、一緒に行きましょうという社会へ転換しなければならないと思います。今回の震災が良い例です。行政は頼りにならないなら、自分たちで作り直そうと言 う力がでてきている事例も聞いています。
◆中山… 結論を急がない。話を聞くことから始め慌てない事が大事です。まず話を聞いてほしい、人によっては時間がかかるかも知れない、そういう人にきちんと寄り添っていかなければいけない。それが大事です。
◇美谷島… 中間的就労のような、その人が最低限暮らしていけるような場所が必     要ということに皆気付き始めている。国でも社会的包摂政策と言う ことで、社会的に孤立する人をなくして、復活するようなチャンスを提供することを考え始めています。この動きがうまく気運として広がっていくといいと思っ ています。

 

2012年は・・・
■青木… 今後の取り組みとして2012年に向かって、どうあるべきか、私たち     は何をなすべきか、それぞれお願いします。
◆中山… まず連合としてすべての働く人のためにできることをする。たとえば     パートや非正規労働者の賃金が非常に厳しい。貧困、格差の固定化につながっている。一緒になってできることをやっていく、それが将来の労働状況を守ることにも繋がっていくと思います。
次に労働者福祉について。「よってたかって大作戦」だと思います。大きな力でずっと続けるのは難しい。ちょっとの力を継続的にやっていく。キーワードは、よってたかってみんなで多くの協力者を集めてやっていくというような視点で考えていきたい。
◇美谷島… 日常生活レベルで社会から孤立させない動きをPSから発信していきた
 い。人を孤立させない社会を作っていきたい。そのために、これまで縦割りでバラバラに取り組んでいたことを、PSが中心的な役割を担ってつないでネットワークを根付かせていきたいと思います。
■青木… 美谷島センター長、労福協に期待したいことは?
◇美谷島… お金も住居もない。そういう人たちにちょっとお金を融通できるシステ ムがあればいい。またフードバンクのような食糧の提供や一時的な住居の確保ができる仕組みを労福協はじめ、いろいろな団体で考えていただければと思いま す。PSはハブとなって多様な団体の活動をつなげ、相談者に重層的にいろいろなサービスを提供できればいいと思います。
■青木… 中山理事長、労福協は何をしますか。
◆中山… 労福協、労金、労済、住宅生協等をフルに使って、「よってたかって大作戦」をどう具体的に制度化していくか、スピード感をもって大至急協力体制 を築いていくことを約束いたします。PS事業に携わるスタッフの皆さんの苦労に感謝申し上げます。そして、素晴らしい活動をしていると思いますので、我々 もできるだけ協力させていただきたいと思います。
■青木… 今年の抱負について一言
◇美谷島… 隈なく県下にPS事業を広めていきたいと思っています。
◆中山… 人と人との繋がり。働く人だけではなく全ての人にできることをやっていくつもりです。
■青木… 本日はお忙しい中、それぞれの熱い想いを語っていただき、誠にありがとうございました。

活動報告一覧