くらしなんでも相談Q&A

退職時の控除金について

相談内容

 先日、会社を退職したのですが、最後の給与明細で「自動車使用料」として25,000円が控除され

いて驚きました。短期間の在職でしたが、採用の際にこのような控除があるとは聞いていませんし、

今まで一回も控除されたことはありませんでした。

会社所有の自動車を仕事で使っていると、退職時に給与から控除されてもしかたないのでしょうか。

解答

「賃金全額払いの原則」違反です。

 賃金は、労基法第11条で、「労働の対償として使用者から労働者に支払われるもの」と規定されて

います。その支給条件については、就業規則や賃金規程によってあらかじめ明確に定められ、事業

主に賃金支払義務が生じることとなります。

 賃金の支給については、労基法第241項で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わ

なければならない」と規定しています。これが賃金全額払いの原則で、賃金支給の際に、事業主が勝

手な名目で不当にお金を控除することを禁止しているのです。仮に労働者が不法行為や債務不履行に

よって使用者に損害を与えた場合であっても、相殺や一方的な控除は労基法違反となります。

 しかし、実際には所得税や社会保険料等を控除する必要があり、その他に財形貯蓄、貸付金返済、

購買代金など私的なものもあることから、同項ただし書きにより「法令に別段の定めのある場合また

は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、‥ないときは労働者

の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うこと

ができる」と定めており、賃金控除協定(以下協定)を締結することによって、限定的に給与から控

除することを認めています。

 法令に定めるものとは、所得税、住民税、社会保険料のことです。それ以外は、協定で定めたもの

限定して控除が認められるのです。

 ただし、この協定は、あくまで賃金からの控除が労基法違反にならない免罪符的な効力を有するに

ぎません。本来は、就業規則や労働協約等に控除についての根拠規定を設けるか、または労働者の

意を得る必要があります。

 

 さて、ご質問では、最後の給与で初めて自動車使用料が控除されていたとのことですが、採用時の

「労働契約書」では賃金控除について明示されていましたか?

また、「就業規則」「賃金規程」「賃金控除協定」はご覧になったことがありますか?見たことがな

ければ、ぜひともそれらの開示を求めるべきです。もし契約書で明示もない、契約書自体がない、あ

るいは規定も協定も存在しなければ、当然労基法第24条に違反します。

仮に口頭でなんらかの取り決めが伝えられてあったとしても、今回の控除について事前に何の説明も

ないことは、事業主の善意な行動と思えません。

毎月控除がなかったのに、なぜ最後の給与で25,000円の控除が必要なのか。その理由を事業主に確認

するとともに、不当な控除として返還請求をすべきです。

 

 

※ワンポイント

賃金全額払いの原則とは・・・

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と

定めており(労働基準法第24条1項)、賃金支給の際に、事業主が勝手な名目で

不当にお金を控除することを禁止しています。

仮に労働者が不法行為や債務不履行によって使用者に損害を与えた場合であっても、

相殺や一方的な控除は労基法違反となります。

 

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているもの、それ以外は、労働者の

過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる

場合は認められます。

※回答者

特定社会保険労務士 山口正人(2019.3)

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